5月2日、早朝6時。
トッテナムとチェルシーによるロンドンダービーが引き分けに終わり、勝ち点差によってレスターシティのプレミアリーグ優勝が決まりました。
なんとなく起きてて、運良くその瞬間を見れて良かったです。
そして「レスター優勝オッズは5001倍」というのが色々な所で注目され、そのとんでもなさが話題になりました。「ネッシーが実在した」がちょうど5000倍だと思ってたんですけど、「ネッシーが今年発見される」が500倍で全然違いました。ヤバ過ぎますね
ところで、
なぜ「残留が目標」と堂々と掲げていた弱小クラブであったはずのレスターが優勝出来たのか?
誰もが疑問に思いますし、自分も不思議でした。
疑問に思いながら色々な情報や、色んな意見を見て、せっかくなのでまとめておきたいと思います。素人視点ではありますが、何卒お許しを。
まず、プレミアリーグとはなんなのか?
絶対的な特徴があります。
・世界一の資金力を持つリーグ
・ファウルの基準が世界一緩い(取られにくい)
この2つです。
世界一の資金力は単純に「放映権が世界で1番入ってくるリーグ」というのが理由です。
「世界で1番放映されている」と言っても良い。となると、当然スポンサーも集まってきます。
結果として、世界中の選手がバルセロナとレアルマドリードの2チームが最終目標のような憧れとしているものの、そうでなければプレミアリーグのどこかに行きたいという風潮があるように見えます。だって1番金もらえますものね。
プレミアリーグ1部に居たら最下位チームでも100億円ほどは入ってくると聞きます。調べたら、年間で
プレミアリーグ(約2750億円)
セリエA(約1230億円)
ブンデスリーガ(約960億円)
だそうです。とんでもねぇな
これに関して、叔父から「サッカーが面白いのは、時代によって全然違う所だよな。昔はセリエA(イタリアリーグ)こそ絶対的な世界一のリーグって言ってもいいくらいだったのにね。ブンデス(ドイツ)なんか全然話題になってなかった気がするぞ」なんて伺いました。面白い……
そしてファウルの基準が緩いというのは、恐らくラグビー発祥の地だから、ではないでしょうか。国民性の違いと決めつけてもいいかもしれません。ドイツのブンデスリーガは組織的で戦術的、日本のJリーグはルール違反(ファウル)に厳しい、スペインのリーガはとてもテクニシャンが多い(らしいです。中村俊輔選手いわく)。
今のセリエはどうなんでしょう、一喜一憂がとても極端で、個人技を強く評価する……みたいな印象あります。
こういう違いがありますが、イギリスのプレミアリーグでは「倒れるな。倒れたやつが悪い」というのを強く感じます。つい最近まで””貴族はクリケット、労働階級はサッカー””みたいなのあったみたいですし、「男らしく力強くあるべし」という思想があるのでしょう。
さて、このファウル基準が緩いというのはどういう効果をもたらすのでしょうか?
当然、プレーが荒くなります。体をぶつけてふっ飛ばしてもセーフだったり、相手が倒れても全くファウル無しなんていうの良く見ます。慣れるまではドン引き……(小声)
慣れてくると、「うぉおおおお!!!!!! 」ってお互いガツガツそこら中でボールの取り合いしてるサッカーで、相手の様子を伺う暇も無いほどなので、早すぎて忙しいサッカー見てて面白いです。変な話、小学生がやってそうな気もするサッカーを超スケールアップした感じ。
岡崎も「考える暇が無いから反射的に判断しないといけない」って言ってたほどです。単純に見てて飽きない。
これは個人的な見解なのですが、このファウル基準が緩いというのは、守備において相手に速く強くいっていいということなので、攻撃側からすると
・ボールキープが難しくなる
・ドリブルがしにくくなる
・パスサッカーがしにくくなる
というデメリットだらけなのではないかと思います。
分かりやすいのがマンチェスターユナイテッド時代の香川真司です。日本人らしい体格で、テクニシャン。いくらブンデスリーガで成長したとしても世界的には体の線は細く、ボール持ってもすぐふっ飛ばされ、ドリブルは今までファウルをもらえたようなタックルを受けて潰されてしまい、パス出そうとした瞬間には潰されてしまう。パスを出せてもパス多いと潰される可能性が高まるからか全然パス交換してもらえないし、パス出さずに1人で突っ込む選手ばっかり……と。
タッチ集くらいしか見てませんでしたけど、本当につらかったですね。「なんでプレミア行ったの」「日本人は絶対にプレミア行くな」と思う事になり、普通にプレミアリーグ大嫌いになりました。ブンデスの良い選手もプレミア行っちゃてましたし。
ってな感じで岡崎もプレミア行くことになって本当に悲しかったです、「岡崎が破壊されちゃう……」っていう。
一応、吉田麻也がSBとしてプレミアでほぼスタメン張ってますけど、一応彼は体格ある訳じゃないですか。岡崎も足ムッキムキで日本代表のキャンプで周りと比べると驚く位ですし、マインツではめちゃくちゃボールキープも出来る選手でしたけど、それでもやっぱり……。ここだけの話「プレミアだけはやめてくれ」ってブログからメッセージ送ったりしてました。
結果として、やっぱり潰されまくってますね。倒れまくり。もちろん「倒れないと怪我する」ってのはあると思うんですけど、それでもやっぱり体格の違い、生まれついての差でどうしようもない部分があると思います……。まだ1年経ってないから慣れてないのかもだけど、もしかしたら日本代表で1番、本田以上にポスト上手くなってるのに簡単に潰されますからね。もう日本人には無理なんじゃないのと思……ってたら、意外とボールキープに全力出して体張って味方にボールを落とすポストプレーでチャンス作りまくったり、なんかボール持ってない時もボールキープするフリして背中で相手を止めてコース作るっていう訳分からんプレイ出来るようになってますね。大好き
変な話ですが、プレミアだったら、いくらボールタッチ・ボールコントロールが良い世界最高選手メッシでも体ふっ飛ばされて全然活躍出来ないと思いますよ。その点、クリロナはクレイジーな筋肉、体の強さあるので普通にやれそう。
さて、このファウル基準が緩いっていうのは、逆に守備側からしたら物凄いメリットにもなりうると思うんです。
・守備で強くいける
これこそが今年のレスターの大きな利点でもあったと考えています。
本来であれば、相手の素早さについていけず抜かれたり、パスワークで翻弄されたり、重心移動を見抜かれて抜かれてしまう場面でも、プレミアなので「さっさと強くいってガツガツ削って、潰してしまう」っていうのが出来る。これこそがトップリーグに来たばかりの雑草集団が活躍できた大きな理由の1つであるはずです。
当然、「誰もが守備に奔走し、誰もが走りまくる」っていうチームスタイルが大きな理由ですが、これが効果を上げたのはプレミアリーグの特色無くしてありえないのではないかと。そう考えます。
ちなみに、この「全員走りまくれ」というのは高給取りのリーグ上位チームの選手にはプレイド的に受け入れがたく、だからラニエリ監督はなかなか結果を出せなかったのではないか。偉そうにできる経歴を持つ選手が居なかったレスターだったからこそ、みんな素直に受け入れ、奔走したからこそラニエリのチームとして機能したのではないか。なんていう意見も見かけました。もしかしたら岡崎が言ってたのかも。
さて、プレミアの特色はここらで終わりにして、レスターの強みはなんなのか?
先ほど言ったように「全員が走りまくる」のは絶対に大きな理由でしょう。
今もう世界中で全員守備なんて当たり前ではありますけど、それでもFWまで全員が守備で超走るっていうのは中々無いでしょう……。コレに関しちゃ岡崎は普通に世界トップクラスだと思いますよ。中央のサイドバックっていうアダ名見かけて爆笑しました。最終ラインまで下がってプレスかけたりする光景をよく見ます、DFからしたらラインを崩しすぎず守備出来るから最高でしょう……。
さりげなく移籍金最高で、実は2009年の国際A試合でドログバと並んで年間15ゴールで世界得点王取ってた岡崎ですけど、まるで偉そうにすることなくチームのために走りまくってたのを見たら、そりゃ周りも頑張る気になった、ってのはあったでしょう。
エースであるヴァーディーは「シンジとの相性は良い」「シンジは、中盤まで降りて守備やパスワークに参加する。おかげで、俺は敵の背後へ抜ける動きに集中できる。チームの狙いは前線から圧力をかけ、できるだけ高い位置でボールを奪うこと。その意味でも、シンジのプレースタイルはレスターに合っている」とまで言ってくれたみたいですけど、
コイツも大概走りまくってますからね。
とりあえず、こうしたFWまでも含めて全員全力守備参加っていうのは、当然ですがボール奪取の可能性が高まり、そしてカウンターサッカーとして得点チャンスが増える訳です。
レスターがゴール取るタイミングって
・ボール奪ってすぐカウンター
・相手のFK、CKを跳ね返してそこからのカウンター
・セットプレー
こればっかりな気がします。
ヴァーディーのスーパーミドルも、ある種のカウンターですし。
あぁ、コレに加えて
・マフレズのぬるぬるドリブルゴール
ありました。これは相手が結構守ってても決めたりしてるから凄い
もちろん岡崎のエアフェイントゴールとか、オーバーヘッドありましたけど、チームとしての得点源と言える量ではなかったですし……。来季に期待。
マフレズ(Mahrez、マレズ)に関しちゃ、「パスセンスあるやつだったらここで岡崎に出して岡崎が決めてただろ!!!!!」っていうのがあまりにも多く、それが1試合3,4回あったのに全部自分で突っ込んで潰されてチャンス消えて……っていうのばっかりだったんで嫌いだったんですけど、なんだかんだゴール取ってて、一度スタメン外れて帰ってきたら少しはパス出すようになったりして、「まぁ、必要な選手ですわな……。パスセンスあれば神だけど」っていう評価です。今季プレミア最優秀選手らしいですが。
ヴァーディーに関しては、「速い」「強い」「ヤバイ」ですね。
岡崎が「勉強になる」って惚れて(?)当然の選手ですし、コイツが居たからこそ「チームに合わせていった」って開き直れた部分あると思います。
「もっと個の力で試合を決定付けられる選手に」って言って目指してるのは、そういうヴァーディーみたいな選手になりたいんでしょう。
今まで、岡崎は「飛び出しのタイミング」と「運動量」を極めて点を取りまくってきてたんですけど、「一人で決められる選手を目指す」っていうのは、ほぼそれを捨てるようなものなんじゃないかと……。鈍足バンザイっていう岡崎の本では、「FWはパスの出し手との理解を深めるのが大事」なんて言ってたくらいですし。
正直、マインツから移籍して、誰からも良いパス来ないレスターではその「得点嗅覚」とも言える飛び出しとかの能力を失くしてしまうんじゃないかって不安ではあるんですけど、たまにある日本代表でやっぱ点決めましたし、好きに頑張ってくれ!頑張れ!!と応援する感じになりました。
(清武獲得の噂がマジなら、これ以上ないほど嬉しいですけど……)
そういえば「レスターの攻撃指示は何もない」らしく、ラニエリは守備についてアドバイスするくらいというのをNumber(901号、絶対読んだほうがいいよ)で知りました。
嘘でしょwww
としか思わなかったのですが、意外と良い戦術なのかもしれないですね。戦術無い言うても「すぐ前線へ」っていうチーム戦術がある以上、必然的に「敵の守りが薄い時にカウンターで決める!」っていう事ですし、細かい所は指示しちゃったら、考えちゃって素早さが失われるのかも。
あと攻める方法決められてたらめっちゃ守りやすいですもんね。モイーズのマンUが1試合に84本のクロスやったのに最下位に追いつかれたなんて事ありましたし。同じことしかしてこないなら、こんなに守りやすいことないですわな。
相手が超一流だろうが、攻撃が戦術通りに同じことしかしてこなかったら普通に守れそうですし、レスターの攻撃指示無いっていうのは、個人能力に頼ってはいるけど、個人能力さえあれば理に適ってる……?(流石に褒めすぎ?)
これらの他にも、プレミアの強豪チームがどこもかしこも調子崩したって事実があるみたいですが、ちょっと詳しくないので分かりません。(とりあえず来季マンUはイブラヒモビッチ獲って欲しい)
あと、これ精神論というか、イメージになってしまうんですけど、レスターが終盤に降格圏のチームとやってて気付いたのが「あぁ、レスターって降格争いのチームと同じ気迫だったんだな」というものです。
つまり、首位だったのに『降格するもんか』というチームと全く同じ気迫だったんですよ。僕が見た感じね
チーム自体も「頑張って守って、守って守って、チャンスがあったら一気に攻める」っていう、どう見ても下位チームの戦い方と言われてもおかしくない方法だったってのもあるかもしれません。
良い意味で「余裕が無い」ように見えました。これも優勝した理由かもですね
では、来季も岡崎とレスターが健闘してくれることを祈って、終わりとさせて頂きます。
最後に、試合見ながら少しずつ「岡崎頑張って……」になってた時に見て、「岡崎プレミアで頑張れ!!!!!」になった記事を紹介させて下さい
終わり
(追記:20171218)
上の記事書いてくれた人が戦術視点からレスターの強みを教えて下さいました。
面白すぎた